大分前に読んだ本ですが、「僕は君たちに武器を配りたい(瀧本 哲史 (著))」が、僕にとってキャリアを考える土台になっています。実際、前職の戦略コンサルタントからのデータサイエンティストへのキャリアチェンジの際にも、この本の思想に相当影響を受け、どうすれば自分の強みを発揮できるか、ということを意識していました。
転職から1年経ち、見える世界の解像度も上がってきたので、改めて自分自身のキャリアについて考えてみたいと思い、この記事を書いています。
自分のために書いているようなものなのですが、想定している読者、書いている内容、私の主張は以下となります。
- 想定している読者:
- データサイエンティストになった/なろうとしているが目先のことで精一杯な人(はい、僕です)
- 書いている内容:
- コモディティ化しないための原則
- データサイエンティストに当てはめるとどうなるか
- 僕自身に当てはめるとどうなるか
- 私の主張(自分への戒め):
- 具体的にスキルが定義されていない領域を目指そう
- 表面的に知識を吸収するのはやめよう
コモディティ化しないための原則
本の主張は以下の通りでした。
※コモディティとは、スペックが定義されたものを指します。
- 資本主義下では、技術革新や情報流通コスト低減を背景に、コモディティ化が加速する
- コモディティ化したものは買い叩かれる宿命にある
- コモディティ化しないためには、投資家視点から物事を考えることが重要
- 投資家視点とは、周囲の評価に踊らされず自分の頭で考えること。すなわち、トレンドを読み、ニッチを見極めること
- 投資家視点を養うには、コモディティ化する「知識」ではなく、「考え方」を身に着けるべき
つまり、スペックが定義されたものは、買い叩かれる宿命にあり、それを回避する策は自分の頭で考えるしかない、ということです。
以降では、上記の主張を、「データサイエンティスト」、「僕自身」に当てはめるとどうなるのか考察してみたいと思います。
データサイエンティストに当てはめるとどうなるか
僕が働いているのは、日系のレガシーな事業会社です。
そんな僕の目線で、一緒に働くデータサイエンティスト、一緒に仕事をしているビジネスパートナーさん、社外でお会いするデータサイエンティストを見て、前述の主張をデータサイエンティストに置き換えると、以下のようなものになると考えます。
- 物知りおじさん、手が動くだけのワーカーはコモディティ化する
- コモディティ化しないために、例え小さくても、勝てる&伸びる市場を見極め、身を置く
- 見極めの感度を高めるために、表面的な知識の過剰収集をやめ普遍的な考え方を磨く
おじさん、手が動くだけのワーカーはコモディティ化する
物知りおじさんに関しては、DXが進めにくい組織だからかもしれませんが、僕の環境では、事例を多く知っているだけで人を動かせないおじさんは高給ではありますがすぐに淘汰されているように感じます。
ワーカーについては、昨今、データサイエンティストを目指している方が増えており、日々の求人情報を見る限り、単に手が動くだけでは条件の良い求人にあり付けないのではないかと思います。また、入社後、手を動かすだけに甘んじていては、データサイエンティストの看板を手に入れたところで、その後が苦しいのではないかと思います。
実際、僕の前職であるコンサルティング業界でも全く同じでした。
私がいた会社では、知識だけがあるおじさんは、1年で首を切られました。
手が動くだけのアソシエイトは(早く進化して欲しいと言う意味も込めて)「作業屋」と揶揄されていました。目的(Why)に照らして、やること(What)を再定義できないと、やらなくてもいいことまでやることになり、さらに首を締めることになります。「イシューからはじめよ(安宅和人(著))」で言うところの「犬の道」です。
コモディティ化しないために、例え小さくても、勝てる&伸びる市場を見極め、身を置く
では、どうするべきかと言うと、王道のデータサイエンティストで勝てるならその道を進めば良いと思いますし、そうでなければ周辺領域で良い経験を積める場所を選び、王道のデータサイエンティストとの差別化を図るべきだと思います。
事業サイド(しかもレガシー事業)にいる人間からすると、手が動くだけの方は比較的容易に外部調達できますが、事業が分かっていてデータ・リテラシーも高い方というのは、本当に稀であり、今、弊社に一番必要な人材だと思っています。
またしてもコンサル業界に例えるなら、ファーストキャリアとして事業会社を選び、セカンドキャリアとしてコンサルを選ぶと言ったことが当てはまると思います。実際、私の前職では、事業会社の中核で働いていた、あるいは、海外経験が豊富な中途社員が、同年代の新卒よりも高いポジションで転職してくることもありました。
「勝てる」という要件は、「自分がどれだけ影響を与えられるか」、と置き換えられます。自分がいかに足掻こうと、裁量が小さく組織の結果に繋がらないようだと、満たされません。
「勝てる」という点において、僕の転職はミスってます。結構ミスってます。
僕の勤め先は、社長直属のデータ活用組織です。ですので、転職当初は社長とタッグを組んで、ゴリゴリ会社を変えてやるのだと思っていたのです。しかし、実質的に社長のコミットゼロ(むしろ敵)であり、なかなか大きな結果を出せず苦しんでおります…笑。今のところは部内では裁量権がそこそこあるので、ギリギリ許容できる範囲だと思っています。しかし、転職市場では、歳を重ねれば重ねるほど、結果が求められるので、なんとか頑張りたいところですね。。
見極めの感度を高めるために、表面的な知識の過剰収集をやめ普遍的な考え方を磨く
こちらの主張も、前職のコンサルティングに当てはめてみます。
コンサルもデータ分析も、目的は共通しており、「良い意思決定」の支援だと思っています。
コンサルで言うドキュメンテーションスキルやフレームワークは、データ分析で言うプログラミング言語や理論に近いと思います。
ドキュメンテーションができたり、フレームワークを知っているだけでは「良い意思決定」ができないのと同じように、プログラミング言語に精通していたり、理論を知っているだけでは「意思決定の本質」には迫れないはずです(俺も本質なんて知らんけど…)。
書いていて辛くなってきましたが、この教訓を僕自身に当てはめてみます。
僕自身に当てはめるとどうなるか
僕の前職は戦略コンサルティングと言う職業で、ビジネス側に強みを持っている(と思われている)ので、以下の教訓を胸に刻もうと思いました。
- 「実務の勘所を押さえた企画ができる人材」として差別化する。できれば「事業ドメインの専門性」も磨いた方が良い
- 現職はデータ活用成熟度的にヤバイ状況だけど、年齢の割りに裁量がありハイリターン*なので、止まった方が良い
*リターンの内容として、「ノウハウを盗める尊敬できる同僚がいる」、「成熟度が低い会社を底上げするニーズは今後高まる」の2つを考えています - データサイエンス周りの知識収集は程々に、データサイエンス以外の知見も取り入れる
上記1. については、転職当初、「実務の勘所を押さえた企画ができる人材」だけで差別化できると踏んでいましたが、今は良くても3-5年後にはキツイそうだなあ、と思いはじめました。事業ドメインのほか、マーケ、生産、調達などのバリューチェーン領域、チームマネジメントなどの組織領域、etcと色々あるので、できるだけ強くエッジを立てておきたいと思います。
上記2. については、記載の通りです。リターン内容に記載している「成熟度が低い会社を底上げするニーズは今後高まる」は、あくまで私個人の見解です。一応下記の前提に基づき推論しましたが、確度まだは低いです。
- 多くの成熟度が低い企業は、成熟度を高めないと生き残れない
- 成熟度が低い企業を外部業者やツールのみで変えることはできない
- 従って、成熟度が低い企業を変えるには内部にデータ活用人材が必要となる
- しかし、成熟度が高い企業から成熟度が低い企業に行きたがる人間は少ない
- よって、成熟度が低い企業でデータ活用人材(特に経営もわかっている人)が不足する
上記3. については、昨年分析周りの知識収集しかしていなかったので、今年はデータサイエンティスト界隈を俯瞰したり、自分の振る舞いや考え方に関して目を向けたいと思っています。
最後に
一度読んだ本でも、時間を空けて読むとまた違う示唆が得られるってすごいですね。シンプルな主張から自分の身に当てはめていくと、意外とできていないことが分かったりします。僕の場合、大体できていません。
本書の主張に照らすと、本の内容を鵜呑みにすること自体も批判しているように思います。「本当にそうなんだろうか?なんでそうなるんだろうか?」という批判的な観点を持ちながら、本当の意味で自分の知恵にできればいいですね。
もし、まだ読んだことが無いと言う方がいらっしゃれば、こちらに読書メモを置いていますので、ぜひご活用ください!
→ 【読書メモ】僕は君たちに武器を配りたい
以上!